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文革
南京大学14人の証言

董国強(南京大学歴史学科副教授)[編著] 関智英+金野純+大澤肇[編訳/解説]

2800円+税 四六判並製 420頁 2009年11月発行 ISBN978-4-8067-1391-3



本書を読まずに、中国の明日は語れない。
「文革が始まったとき、私たちは、これはスターリンの大粛清と同じではないか、という議論をしたのですよ----------」
その渦中にあって、文革を冷静に見つめてきた中国知識人14人が、初めて歴史学者のインタビューに応じた。中国国内にありながら、 現代史の空白を埋め、闇を照らす証言、そして、中国の今後が見えてくる提言。
日本語版世界先行発売。

中国国内を内戦状態に叩き込み、「造反有理」の学生たちが、世界中にインパクトを与えた「文化大革命」(文革)から40年。
中国現代史研究をリードする歴史学者が、さまざまな立場で文革に関わった14人の証言から、これまで語られなかった中国現代史の空白を埋める。

【目次】


日本語版の刊行に寄せて 董国強

はじめに 関智英

本書をよまれる方に 金野純
   文革―中国現代史の「空白」
   本書の意義
   これだけは知っておきたい文革の基本知識
 コラム1 日本の南京イメージ
   辟邪
   南京神社
   芥川龍之介
   南京事件
 南京市内地図
 南京大学構内図

1「革命」の勃発、深まる派閥対立
   農村「四清」運動への参加
   「造反」の勃発―リツ陽分校「六・二事件」
   壁新聞の書かれた背景
   署名を逃れてシャワー室へ
   匡校長の反撃
   高まる不安
   Hの密告
   突然の形勢逆転
   紅衛兵組織の誕生
   複雑化する民衆の派閥
 コラム2 紅衛兵
   紅衛兵の誕生
   活動のレパートリー
   紅衛兵運動の功罪
 南京大学文革各派概略図

2文革勃発に遭遇-一夜にして英雄に
   全校で百キロ行軍
   彼女は小さな宋美齢だ!
   何故私が表彰?
   後ろで誰かが糸を引いている―私の感覚
   私服警官に囲まれる
   「苦しい時代を思って食事をする」
   資本家出身の影響
   「天南海北」―歴史学科の就職事情
   竹竿でスズメを追っ払う
   「落花生」は木になる」
   「毛沢東を打倒しよう!」
   農民に残る人間性
   常識は真理である
   密かに試験を受ける
   文革の与えた影響
   個人の境遇は自分でコントロールできない
   天安門事件の鎮圧は当然
 コラム3 匡亜明とリツ陽分校
   安藤彦太郎
   匡亜明を礼賛する住民

3日頃の恨みが文革で爆発-生物学科の文革
   出身は「資本家兼地主」
   ベッドの中で文革勃発を知る
   「ジェット式」をさせられる―労働改造
   教え子による家財没収
   全身墨汁だらけ!
   「好派」と「屁派」
   階級の純潔化
   『語録』を暗唱、また暗唱!
   グループで用をたす
   五十キロの石炭を持たされた老教授
   全ては身内の仕業
   一家離散
   自己批判、そして解放
   大学へ復帰
   周恩来の死に際して
   私の文革観―四つの類型
 コラム4 身分・档案
   身分制国家としての現代中国
   出身血統論の出現とそれへの批判

4共産党エリートに対する容赦ない迫害-Zの陰謀
   革命烈士の父
   自伝を書いて入党
   大学卒業後、ソ連へ派遣
   名前の上に「×」印が!―文革勃発
   トイレにまでついて来た監視
   労働改造は掃除
   ミミズを口に入れられる
   大衆の目はごまかせない
   気がかりは二人の子供
   偽党員・偽烈士
   子供たちにも毒手が……
   リーダーZの野心
 コラム5 単位
   単位制度の機能
   抑圧の反面の社会保障
   カイシャ・アズ・ナンバーワン

5文革とは完全な奪権闘争である
   内戦には徹底反対―中央大学から南京大学へ
   院系調整の状況・評価
   教壇に立つ
   最初の批判
   危険人物であった私―二度目の批判
   「黒い人物」―文革の勃発
   「謀反人の太鼓持ち」
   大学よりも激しかった中学での闘争
   文革とは完全な権力闘争である
   「牛小屋」に押し込められる
   二本の枕木を一度に運ぶ
   「牛小屋」時代の経済
   決定権はそれぞれの学科に
   正常化していくと感じた時期
   文革を挟んで
   復帰後の軍宣伝隊、工作宣伝隊との関係
 コラム6 南京大学
   三江師範学堂
   金陵大学
   中央大学
   岡村寧次
   何応欽

6残酷な階級闘争-「逍遙派」がみた文革
   激しくなる「階級闘争」
   高まる造反―天地を覆う壁新聞
   三つの派閥へ分化
   無料で全国行脚
   毛主席現る!
   「階級の純潔化」と文革への疑念
   ある愛の悲劇
   農村での経験―僧侶の自殺
   林彪の息子になる!
   文革の失敗を露呈させた林彪事件
   怪文書―「周恩来総理の遺言」
 コラム7 下放・戸籍
   下放と戸籍政策の起源
   「移動の時代」としての文化大革命
   戸籍制度と下放政策のなごり

7文革の黒幕と出会う-紅衛兵運動始末
   不可解な批判
   大学を批判する
   大学当局の反撃
   北京へ行く
   同郷人に救われる
   文革の黒幕との出会い
   張春卿訪問
   北京再訪
   毛沢東の接見
   私たちは「紅色造反隊」にしましょう
   労働者と連帯する
   仲間割れ
   自立できなかった紅衛兵運動
   軍隊との対立
   激化する武力闘争
   許世友を攻撃する
   北京での談判
   「石油大根」
   苦中に楽しみを見出す
   南京での監禁生活
 コラム8 糧票
   一斤の水餃子
   配給制度
   神保町
   米穀通帳

8それでもマルクス主義を信じている-ある共産党員がみた文革
   文革への序奏
   文革と人間性
   南京大学の武力闘争
   文革中の父
   七六年春、南京事件(「三・二九南京事件」)
   文革はなぜ起きたのか
   マルクス主義は信じている
   毛沢東は七割の功績と三割の過失
   文革の後遺症
   民主集中は虚構である
   大躍進の問題
   周恩来・陳毅・賀龍・劉少奇について

9やりきれない思い-でっちあげられた反革命組織「五・一六」
   文革の勃発
   匡亜明校長の吊し上げ
   文革なんてつまらない
   何故匡亜明は批判されたのか?
   「男」だった文鳳来
   「五・一六」グループの調査
 コラム9 毛沢東語録
   毛主席語録
   紅宝書
   魯迅語録
   林副主席語録
   再版前言

10文革の正体、見たり!-中国文学科助教、創作班の日々
   兄は台湾、弟は大陸
   「卒業論文、書く必要なし!」
   「働きながら学ぶ」
   殴られた匡校長
   文革の正体
   「経験交流」で毛主席と会う
   毛主席、あなたさまは私たちの救世主
   文革の「受益者」として
   林彪事件の衝撃
   「アメリカ人の百倍嘘をつく中国人」
 コラム10 造反派と保守派
   造反有理
   政治的レッテル

11造反・尋問・強制労働-造反派幹部の文化大革命
   ベトナム人留学生クラスの教師として
   造反派の幹部となる
   省工作隊との対決
   「八・二七革命経験交流会」との死闘
   人民大会堂での斡旋
   嘘の自白
   強制労働の日々
   告発の時
   信念を持つ「造反派」と勝ち馬に乗る「逍遥派」
 コラム11 南京の街
   山手線
   中山陵
   中山路
   『首都計劃』
   支那派遣軍総司令部

12二度の監禁と獄内闘争
   栄養不良も何とか進学
   「黒五類」も気にせず学習
   子供をだしに自白を強要
   肉入り春雨の秘密
   繁華街での課外授業!?
   留置場での事情聴取
   我が闘争
   滑稽な批判大会
   死刑でも名誉回復される方法
   煙草一服、解放の味

13紅衛兵から政治犯、そして海外へ
   寺を暴いて饅頭燃やす
   銃を自作
   「下放」の日々―興奮から絶望へ
   文革中もコネ頼み
   大学入試奮闘記
   「特権」の享受者として
   静かなる抵抗
   「三・二九南京事件」を起こす
   深夜の警告
   娃娃橋の日々
   民主の風
 コラム12 「三・二九南京事件」と中国民主化運動の系譜
   天安門事件    民主化運動の起源としての文革

14絶望の大地から-大学生の見た一九七〇年代中国農村の貧困と汚職
   「走資派」の子供として
   死にゆく者への祈り
   農村からの脱出
   大学生活に興奮
   「君たちは自分の良心が痛まないのか?」
   汚職の横行
   夜明け前
   第一次天安門事件の意義

文革研究とオーラルヒストリー 董国強

あとがき 関智英

索引

略歴


訳者(関智英)より


本書は2006年から07年にかけて、南京大学歴史学科の董国強氏によって行われた、文化大革命をくぐり抜けた南京大学関係者14人の口述記録である。今回、世界に先駆けて日本で公刊されることとなった。

日本人にとって、南京での文化大革命、と言われてもなかなかイメージが沸かない、というのが普通の反応であろう。むしろ日本人にとって南京は、日中戦争と絡めて想起されることが一般的である。
1937年の日本軍の南京攻撃に伴い、多くの中国人が殺害されたことはすでに周知の事実であるが、その後8年間にわたって、南京には軍民合わせて数万人の規模で日本人が暮らしていたことについてはあまり知られていない。この南京の街は、日本の敗戦後も歴史の渦に巻き込まれ続けた。
重慶から南京に戻った蒋介石率いる国民党政権は、中国共産党との内戦の結果、首都南京を抛棄、中国共産党がこれに代わった。さらに本書の扱う文革時期には、北京大学での動きにいち早く呼応した南京大学を中心に、全国でも有数の文革の主要拠点となるのである。
本聞き取りの意義はいくつか挙げられるが、本書インタビューの対象となった14人が、一般人でありながらも、現代中国の社会を指導する立場である点は注目に値しよう。14人はインタビュー当時、80代から50代の各世代にわたっており、文革中に批判された人から、積極的に攻撃・批判に関わった人まで、それぞれの経験は多様である。しかし、本口述記^を通じて我々が感じるのは、彼らに共通する、冷静にことの成行きを眺めるという姿勢であり、またその眼差しの先に現代中国の将来を見据えている点であろう。 本書の聞き取りは南京における文革を軸としながらも、現代の中国知識人の中国の将来に対する提言ともなっているのである。聞き取りの経緯は董国強氏による巻末の解説にも詳しいので参照されたい。
本書の編輯に際しては、日本の読者向けに金野純が解説を執筆したほか、現代中国や南京に関するコラムをふんだんに用意した。

文革時期の中国に馴染みのない方は、まず解説やコラムを読んでいただくことで、南京という街の雰囲気、南京大学での文革の中国全体での位置、さらに中国史における位置がより明確なものとなろう。また、本書には南京市内に残る各種建築(外交部・励志社・浦口駅・蒙蔵委員会・南京神社……)を含む百枚を超える写真を掲載した。

本書が南京さらには中国社会を理解する一助となれば幸いである。