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動物と人間の歴史

著者……江口保暢

2400円 四六判 312頁 2003年2月発行
ISBN4-8067-1257-4

古今東西、動物にまつわる 伝承、風習、信仰、食文化、伝記、怪談……
野生の動物と人間が出会ってから、
どのような文化が生まれたのか?
その歴史を平易な読み物としてまとめました。

動物なくして歴史なし
現在では、単なるペットになってしまった動物たちでも、歴史をひもといてみると意外や意外、おおいに人間社会に貢献をしていることがわかった!

身近な動物たちがより親しく感じられる。
豊富なペン画とともに書き下ろした動物の歴史まるわかり本!

歴史の流れの中での動物たちの役割や変遷をコンパクトにまとめ、多くの文献から、社会習俗、食文化、伝記、怪談までをわかりやすく記述しました。
この本一冊で動物にまつわるさまざまな知識が得られます。

オオカミ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ブタ、ニワトリ、ヘビ、ネズミ、ネコ……身近な動物たちの歴史を知ると、意外な事実がたくさんあった!

書評再録 読者の声
【主要目次】

はじめに−−動物たちの隠れた歴史を知る………… i→ 「はじめに」を読む

第1匹 オオカミ 狼が来た!
犬はいなかった
悪霊の象徴だった狼
西洋で狼が撲滅されたわけ
日本で狼が崇拝されたわけ
日本各地で伝わる送り狼の話
日本の狼が絶滅するまでの歴史
【こぼれ話】■徳川綱吉の狼の狩猟規制 ■遊牧・騎馬民族突厥の狼崇拝

第2匹 イヌ 犬は友達
狼をペットにする
犬が食べられなくなったわけ――番犬から狩猟犬へ
縄文人が連れてきた犬
農耕民の誕生でふたたび番犬に
【こぼれ話】■狩猟民から農耕民と遊牧民へわかれたのは?
中国原産の犬は型破り
狩猟民・遊牧民にとっての犬とは?
犬の品種はさまざま
古代文明の犬崇拝
日本の犬崇拝
犬医者の登場と生類憐れみの令
【こぼれ話】■「犬追物」という競技 ■犬が出てくる昔話


第3頭 ヤギ、ヒツジ 山羊と羊は遊牧の世界から
山羊はどうのようにして家畜になったのか
遊牧民から農耕民へ渡った
日本へ山羊が来た
牛より早い山羊の乳利用
草原を丸坊主にするまで食い荒らす破壊神
家畜になる前の羊とは
「羊のように」という言葉――家畜化されてしまった羊
さまざまな羊
「牧師」や「資本」の語源は羊から
【こぼれ話】■遊牧民が積極的なのは? ■遊牧国家のできるまで ■説話のなかの羊 ■羊膜の語源は?

第4頭 ウシ 牛は農耕ととともに歩んで来た
農耕の始まりはバナナから
牛を家畜化した農耕民
なぜバイソンではなく牛が崇拝されたのか?
農耕民は牛を食べない
遊牧民にとっての牛
水牛、ヤク、野生の牛
牛乳の始まり――一番おいしい乳はどれ?
バターの製法はどこから?
牛車は古代の最初の戦車だった
古代エジプトの牛への信仰
もっとも牛を崇拝するインド人――ヒンズー教と牛
「犠牲」という文字に牛へん――中国殷代の牛の供犠
【こぼれ話】■昔の中国人は乳嫌い ■地震と牛
日本の牛の歴史
日本人の宗教観での食肉忌避の背景
【こぼれ話】■日本の牛に関する伝説 ■天神様と牛

第5頭 ウマ 馬が駆け抜けた遠い道
馬はアメリカから駆けて来た
馬と遊牧民
驢馬とオナーゲル
馬車から馬戦車へ
馬の利用と強大国家の出現
騎馬民族の出現
【こぼれ話】■漢の武帝、良馬を求める ■ローマ人の動物狩り  ■狩猟民だったゲルマン人 ■十字軍が失敗したわけ ■ジンギス・カンの騎馬戦 ■アメリカインディアンは馬を知らなかった ■ナポレオンの騎兵隊
馬は平和に生きている
バラモン教と馬
ギリシア神話と馬
馬を食う話
日本の馬の出現
【こぼれ話】■弥生人の由来
馬と馬具と騎乗術の日本への渡来
日本民族の形成と日本馬の産出の機運
馬を食う話・続
日本の民俗のなかの馬
【こぼれ話】■新宿駅前の馬水槽

第6頭 ブタ 豚は肉と脂の塊
猪から豚に
豚の家畜化
土地の開墾と獲物の探索にも使われた
豚のメリットは?
日本の猪の飼養
【こぼれ話】■中国人は豚肉好き
豚は汚いか?――古代エジプトの豚肉食禁制
ユダヤ教と豚
キリスト教と豚
イスラム教と豚
民俗のなかの豚
「家」と「豚」の関係

第7羽 ニワトリ 鶏は太陽を呼ぶ
鶏は夜明けを告げる
鶏の家畜化と世界への広まり
鶏をけっして食べないゾロアスター教
日本人と鶏
いろいろな地鶏
よく見かける鶏の品種
伝承や民俗のなかの鶏
酉の市
鶏はおろか卵も食べないという風習
【こぼれ話】■闘鶏のこと ■風見鶏の由来 ■鳥居の由来

第8匹 ヘビ 蛇の神秘性
蛇にたいする東西の感情
地震を起こす世界蛇
蛇は守護神
三輪山説話と箸墓説話
【こぼれ話】■蛇神
蛇はなぜ信仰されるのか
メドゥーサの首
アジアの龍とヨーロッパのドラゴン

第9匹 ネズミ ネズミの害と愛嬌
ネズミと農耕民
日本語の「ネズミ」の語源と別名
【こぼれ話】■ネズミの嫁入り ■鼠小僧
悪魔菌ペストの歴史
ヨーロッパのネズミ伝説
【こぼれ話】■ネズミを怖がったライオンと狐(イソップ寓話より)
日本のネズミの伝説
ネズミにまつわる迷信
【こぼれ話】■ネズミ浄土(「おむすびころりん」の話) ■ネズミ経 ■十二支のトップがネズミのわけ

第10匹 ネコ 猫が来た苦難の道のり
愛すべき猫たち
コンパニオン・アニマル
猫好きな古代エジプト人
スカラベと猫
猫、ヨーロッパへ行く
猫、アメリカへ行く
猫、東へ行く
猫、日本にやっと来た
猫の受難の時代
【こぼれ話】■ユダヤ教とイスラム教と猫
航海と猫
猫の妖怪と化け猫――化け猫話いろいろ
猫が行燈の油をなめると
【こぼれ話】■怪談・佐賀の怪猫
猫にまつわる迷信!?
有名な猫の建造物
招き猫の変遷――不況で手が高くなる
招き猫の発祥は?
猫の語源


参考図書一覧

はじめに

 いつも見慣れている動物たちなのに、私たちはその動物たちの昔のことをよく知りません。

 本書は、私たちの身近にいる動物たちが、私たちのもとにやって来た遠い道のりを、読み物としてまとめたものです。これらの動物たちは、歴史の始めから、人に慣れ親しんできたわけではなく、長い長い年月をかけて、人との付き合いが深まってきたのです。太古の昔から人との付き合いのあった動物もいれば、最近(といっても一〇〇〇年単位ですが)、人との付き合いが深まった動物もいます。これらの動物はどこからやって来たのでしょうか?

 動物と人の歴史は専門書などでは詳しく述べられていますが、専門的すぎて一般的ではありません。これを平易に書いた本はたいへん少ないのです。現在、学問としてではなく、動物好きの読者が、動物たちの一通りの歴史を知る機会が少なく、それらの歴史が隠れて見えにくくなっているのでは、と考え本書を書きました。本書はまた「動物たちの隠れた歴史」でもあるのです。

 人類の歴史は、近代までは動物たちを利用し、発展してきました。本書では、広く世界史の観点から、中央アジア、エジプト、ヨーロッパ、アメリカ、インド、東南アジア、中国、そしてとくに日本での動物たちの歴史をとらえてみました。

 どの章から読み始めても構いません。最初から読まなければわからない、というような本ではありません。いつでも、どのページを開いてみても、それなりの話題を鑑賞することができるでしょう。動物たちの歴史を語るなかで、その動物に関係する歴史的事件あるいはちょっとしたエピソードを「こぼれ話」という形で収録しました。「こぼれ話」は、動物たちの歴史をいろどる大事な要因となっています。また本文中のイラストは、巻末に挙げた文献などを参考に、著者自身で描いたペン画です。壁画などは、このようなペン画が細部まで一番理解しやすいので、ぜひご鑑賞ください。

 本書では、身近な動物として、狼、犬、山羊、羊、牛、馬、豚、鶏、蛇、ネズミ、猫の十一種類を選びました。このように動物たちを一冊にまとめた読み物は珍しいでしょう。本書に取り上げた動物たちのほかにも、まだたくさんの身近な動物たちがいます。それらの歴史については、また、みなさまに読んでいただける機会があることを祈っています。

江 口 保 暢